料理人-ED⑨『料理人レティシアの人生』
セントラルシティを1人で去る事になったレティシアは
今までの人生の事を走馬灯の様に思い出しました。
それは遥か昔の事、50世紀を目前にした現在より遥か過去の21世紀、
旧文明が栄えていた頃にレティシアは南フランスで誕生しました。
彼女は5人家族で両親・姉・妹と幸せに暮らしており
誰よりもやんちゃでいつも他人を振り回していました。
彼女は生まれながらにして菓子作りの心得がある事を自覚すると、
大好きだったチョコレートを主にしてパティシエを目指すようになり
製菓学校に入学して、周囲から一目置かれながら主席卒業して
世界パティスリー大会のチョコレート菓子部門を史上最高得点で優勝し
自分自身の店『レティシア・デ・モノポール1号店』も開いて
フランスで国民的人気を得たり、20代前半で世界中のあらゆる表彰を受けて
「人類史上最高のチョコレート菓子職人」と称されたり
華やかな人生を送ってきました。それは、本当に幸せな日々でした。

でも、幸せは長くは続きませんでした。

国際情勢が悪化して店が戦禍に晒された際に彼女は瀕死の重傷を
負いました。しかし彼女は天才的な外科医の手によって一命を
取りとめ、戦争の終結後には店を再開することができました。
その後、彼女は戦争時にはぐれた家族の帰りを待ちながら
店で働いているとやがて自分自身の身体の異変に気が付きました。
戦争時に助けてくれた外科医は大のチョコレート好きで
熱狂的なレティシアのファンでした。
外科医は『彼女にいつまでもチョコレートを作り続けて欲しい』
というわがままで、彼女を不老不死にする処置をしたのです。
不老不死から元に戻りたくても、外科医は戦時中に他界しており、
誰も元の身体に戻す方法は知りません。やがて不老を指摘されて
永遠の命を拒絶した彼女は地位と名声を捨てて故郷を去りました。

南フランスを去った彼女はそれでも菓子作りはやめられずにいました。
各地で店を開いては不老を指摘される前に閉店、の流れを繰り返して旅をしていました。それでもお菓子は好きでした。
家族を失った彼女の心の支えとなったのが、菓子を人に食べてもらい喜んでもらう事だったためです。
そんな彼女の心の支えもいとも簡単に折られてしまいます。
店を開いていた都市に巨大な隕石が落下し、周辺都市は壊滅。
その地域にいた人間でただ一人、彼女だけが生存していました。
翌年になると追い打ちをかけるように、数千年ぶりに訪れた氷河期の影響で
全人類の99.999%が死に絶えました。
それでも彼女は無事でした。でも彼女は喜べるはずがありません。
「不老不死」である事が段々と災いに転じて
彼女は地球上にいる生存者を捜し求める孤独の旅を始めました。
途中で彼女は何度か自殺を試みましたが、死ねませんでした。
崖から飛び降りても。
サメの群れに飛び込んでかみ砕かれても。
焼身自殺を計っても。
どんなに、どんなに、どんなに死にたくても…………彼女は死ねませんでした。
死ぬことを諦めた彼女は生存者を捜す旅を続行しました。二千年もの期間………大陸の隅から隅まで。
ユーラシア大陸を歩き回っても。
アフリカ大陸を歩き回っても。
オセアニア大陸の島々を泳ぎ回っても。
そんなに、それだけ捜し回っても、彼女は生存者に出会えませんでした。
やがて彼女は「自分自身と同じ不老不死の人がいたら…」と思うようになりました。
"天涯孤独の自分と同じ存在がいて共に過ごす。"
それが唯一の彼女の"救い"となっていました。
そんな思いを抱えて北米大陸までやって来た彼女はようやく生存者に出会う事ができたため
二千年ぶりの笑顔を見せました。
彼女はいずれ西海岸の荒廃した都市部にたどり着きセントラルシティ創設者の1人となりました。
他の流浪人達と交流を楽しんでいると、1人の少年が街にやってきました。それが後の画家"リッキー"でした。
身寄りのないリッキーと実家族の様に数年暮らし続けていつまでもこのような関係でありたいと思った彼女は、
ある日、荒廃した家の中からある物を発見しました。それが「人を不老不死にする処置手術の方法と道具」でした。
彼女の人生を狂わせた外科医の家はセントラルシティ周辺にあったのです。
「実家族の様な存在のリッキー」と「人を不老不死にする道具」
彼女の考える事は、ただ1つでした。
「リッキーを不老不死にして永遠と共にしよう。」
あの外科医と同じ行ないをすることになったが
彼女は特に罪悪感など感じていなかった。それは「自分が地球上で一番辛い思いをしているから。」
彼女は数十日もの間、綿密に計画を練っていよいよ実行に移す時がやってきた。
街に滞在している吟遊詩人や少女を嘘筆談で別の場所へ誘導し、少し不自然にも見えた約束の取り付けを通して
なんとかリッキーを1人にしようとしましたが、
約束の時間にセントラルシティに行くと服を赤く染めたリッキーが地べたに倒れており、横に音楽家が立っていました。
音楽家は寝ていたリッキーの様子を心配していただけだが
その様子を見たレティシアはリッキーの身に何かあったと思い
「家族を失いたくない」という恐怖心から
衝動的に音楽家を殺めました。
人殺しなど考えた事もない彼女は我に返り、後悔した。
「私がリッキーを誘い出してなかったら…」
彼女には罪の意識がありましたが
その後にしたのは事件の隠蔽でした。
更には誰かに音楽家を殺した罪を擦り付けようともしました。
それは、「これ以上辛い思いをしたくない」という恐怖心から。
やがて、彼女は犯人と断定され、1人で街を出た。
最後の希望であった「不老不死の孤独から解放される」事も叶わなかったレティシアは、泣き続けた。
数千年も人を捜し続けて、やっと巡り合えた救われる機会の筈だったが、彼女の人生は全て台無しになった。
地位も名声も、故郷フランスの家族も、リッキーも、料理を求めに来る客も友人も皆失った。それでも彼女は足を動かす。
また旅をしても誰にも会えないのに。レティシアの人生に夜明けがやってくる事は二度と無いのに。
…それでも、それでも。救いを求めて彼女は彷徨い歩き続けた。彼女以外の人間がいなくなった地球を永遠に。
吟遊詩人エンド:①君の想いと共に / ②すまない、そしてありがとう / ③君はどこへ行った? / ④孤独の詩人 /
サブ①帰る故郷がある / サブ②故郷に帰れぬ男 / サブ③数十年ぶりの故郷 / サブ④故郷を捜し求めて
少女エンド :①第二の悲劇 / ②情けない父 / ③義父 / ④もういない父を捜す旅の続き /
???エンド :①この嘘はあの世まで / ②本当の再会 / ③これでよかったのだろうか / ④災難の終わり /
料理人エンド :①2900年ぶりの祖国 / ②どうせなら賑やかに / ③悪魔の料理人 / ④罪の償い / ⑤譲ってもらえた願い /
⑥救いの死 / ⑦この世の地獄からあの世の地獄 / ⑧人類の最期を看取る女神 / ⑨料理人レティシアの人生 /
⑩語られぬ死 / ⑪近づく死 / ⑫夜伽 / ⑬葬送式 / ⑭余生 / ⑮来客の少ない店のその後 /
⑯チョコレート専門店開業! / ⑰いつもの日常 / ⑱ただ人を待つ
画家エンド :①詩吟と絵画 / ②画家の人生の始まり / ③家族だった料理人 / ④2人の画家 /
⑤幸せ涙 / ⑥本性を露わにした料理人 / ⑦永遠を生きる2人 / ⑧伝染する画家の概念/⑨幸せな老後
投票放棄エンド:①誰も知らない流浪人たちのその後 / ②いつかまた会える時まで / ③復讐なんて似合わない /